
1月13日(日)川西(兵庫県)朝日カルチャーセンターにて、
「穂村弘×角田光代 ~新春対談 ほんとうに書きたいこと」が開催されました。
わたしにとっては大好きなゴールデンコンビ!
間違いなくおもしろいだろうと期待して参加。
特に妄想人間の生穂村さんに会えるなんて興味津々です。
おふたりが数メートル離れて向かい合う形で壇上に置かれた二組の机と椅子。
そこに座って、どちらかというと穂村さんが角田さんにいろんな質問を投げかける形で対談は進められました。
対談の副題は~コトバの可能性と不可能性~
穂村さんが角田さんの文体の特徴について語ります。
川上弘美さん、江國香織さんなどは独特の文体があり、極端な話、書き出しの1行を読んだだけで、このひとだってわかる。
でも角田さんはそうではない。
それに対して、
(わかっていただき)嬉しいです。
私はずっと文体のない、無個性の文章を目指していると語る角田さん。
あえて紋切り型の表現を使ったりするのだそう。
好きな作家、尊敬する作家を聞かれ、
開高健に打ちのめされたと。
22年書いているという角田さん。
最初の10年は1年に1本100枚程度の依頼しかなかった。
これではダメだと思い、穂村さんいわく「1000本ノック方式」で日々文章を鍛え上げてきた。
とにかく書く。書いて書いて書きまくる。
並行して読む。読んで読んで読みまくる。
川端康成、志賀直哉などの短編を読みまくった。
若い頃はすこしもおもしろくなく理解もできなかったのに、
志賀直哉の「網走まで」を読んで、ゾワッとする自分がいた。
当時30代後半、年を取るのも悪くないと思った。
「1000本ノック方式」について穂村さんが、
そういうひとはたくさんいると思う。
でも角田さんはそこからある扉をこじ開けることができた。
それをできるひとはそういないと思う。
なんでその扉を角田さんは開けることができたのか、
その後も穂村さんは、そこにこだわって幾度となく問いかけてましたが、答えは得られず。
角田さん、今、作家人生初のスランプに陥っているのだとか。
(書きたいものを書き尽くしたのか)書きたいものがないのだそう。
そういう場合、1~2年休む人とそれでもとりあえず書き続ける人がいると思うが、自分は後者。
休んだ後、書けなくなるとは思わないが(休むのは)怖くてできないと。
それを聞いてなんとなく、角田さんって今、実生活がとても幸せなんだろうなって思いました。
容姿・才能・優しさのうちのどれを一番男性に求めるかという穂村さんの問いに、
角田さんは優しさと答えました。
穂村さんはその質問をいろんなひとにするそうです。
ちなみに本谷 有希子さんは迷わず才能と答え、優しさなんて要らないと言ったそう。
間違いなくいいそうです。
ただ10年後、同じ質問にどういうのか気になるところですが。
今度は穂村さん。
穂村さんはぬる~い感じで話を進められ、
何度も「あれっ!?今何の話だったっけ」とおっしゃるのですが、
それに対して角田さんはちゃんと、こうこうこういうお話でしたと答えるのです。
まじめというか当たり前だけどちゃんと仕事として向き合っているのだなと感心。
穂村さんはツイッターのつぶやきをよくみるそうなのですが、
中高生の若い世代のあの感性は今の自分にはもう持ちえないし、語れないと。
「春夏秋冬がいっぺんに来て怖い」とつぶやいた中学生のその気持ちはその年代だからこそ発せられる言葉。
もちろんそういう時があったから共感はできるが今の自分がいうと嘘くさいし言えない。
「空港行きのバスの中で、アジサイが綺麗ねと母が言った。私は綺麗とも思わないし花だとも思わない」(←若干違っているかも)
このつぶやきにも反応する穂村さん。
母娘が一緒に旅行に行ってる雰囲気ではない。
多分帰省してまた娘は都会に戻るのかもしれない。
娘は母の望むような娘にはなれないしなりたくもないと思っているのではないか・・・
そんな妄想してしまう穂村さん。
歌人らしいですよね。
あと、歴史に名を残す大作家で、
若い頃書いた作品を晩年手直しする人が結構いるが、
ほぼ例外なく直した作品は悪くなっていると言ってました。
それってすごくわかる気がします。
その年齢(時)だからこその、感じ方・情熱・エネルギーなど諸々が織り込まれての作品なんでしょうね。
最後、
角田さんに対して、作家を目指す人にアドバイスできることがあればという問いに、
「10枚でもいいからとにかく書き終える」
「自分が面白いことを他人が面白いと思うな」
この後質疑応答。
いらした聴衆の方たちは20代から40代くらいの女性が多かったです。
120名ほどでしょうか、その中で男性は20名弱かな。
センスのいい美しい女性が目立ちました。
質問なさった方も、当然内容も言葉についてで、堂々とした話し方をなさる方ばかりでした。
わたしも質問内容しっかり考えていたのよ。手はあげなかったけど。
というか他の方のあまりにちゃんとした質問に怯んでしまったわ。
角田さんには
「多分日本の女流作家のなかで角田さんか三浦しをんさんかってくらい稼いでおられると思うのですが、ありがちなハイブランドを身にまとったり別荘などの不動産を買ってみたり、エステや美食三昧の生活などに走らず、物欲なさそうにみえます。角田さんが今までにやった最高の贅沢はなんでしょうか」
「角田さんはクロワッサンのダイエット特集にしょっちゅう顔出してますが、これまでで一番効果があったダイエット法は?」
穂村さんには
「穂村さんは多分結婚しない人だと思っていました。ところが結婚なさいましたよね。結婚しようと思った決め手はなんですか」
あまりにミーハーすぎて、おふたりはもちろんあそこに座っている方皆ドン引きでしょうかね~。
サインもしてもらいました。
わたしは50番過ぎだったので前の様子がよくわかりませんが、
サイン部屋に入ったら穂村さんの方に長蛇の列でビックリ。
先に角田さんにしていただきました。


角田さんのカーディガンの鹿がとても可愛らしかった。
快く撮影に応じてくださいました♪
45歳とは思えないお肌の美しさと若々しさ。
ボクシング効果でしょうか。

穂村さんは50歳ですよ。
全然見えません。
靴がわたし好みでした。
穂村さん、ひとりひとりに「今日はどうでしたか?」って聞いてくださってました。
サイン会でそういうのって初めてです。
だいたいパパッと書いてくださって終わり。
しかもあのゆる~い感じなんで、時間かかったのかな。
でも嬉しいですよね、そういうの。
「穂村さんってわかってくれるひとだけわかってくれればいいというタイプの方なのかなと思っていたけど、
今日お話を聞いていて、誰からも受け入れられたいって思っている方なのかなって思いました」って言ったら、
「もちろん、そうですよ」っておっしゃいました。


サインと一緒に、机に置かれたご自分の短歌集を開いて、
そこから適当?に選んで、一言書いてくださいました。
「ドライアイスに指をつけても平気」
どういう意味!?
わたしってそういう女なイメージ?
たしかに平気だけどなんか納得いかない(笑)
(本来の歌は「完璧な心の平和、ドライアイスに指つけても平気だったよ」です「手紙魔まみ 夏の引越し」に収録)
ほかのひとはどんな一言書いてもらったんだろうな。
関西圏はもとより、東京・青森・広島・岡山・山口などからいらした方もいたそうです。
この対談を企画なさった川西朝日カルチャーセンターに感謝。
もっともっとお二人の話が聞きたいと思った楽しい対談でした。